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職務発明補償金の算定における「使用者の利益」判断の法理

職務発明に対する補償金を算定する際の考慮要素である「使用者の利益」についてその判断基準を提示した最近の特許法院判例(2023年8月31日宣告2021ナ1664)を紹介したい。

本事案において、原告は、被告の職務に関連して完成した本件各特許発明について特許を受ける権利を被告に承継させ、被告が本件特許発明を実施することによってコスト削減による独占排他的利益を得たと主張し、被告を相手に職務発明補償金の支給を求める訴えを提起した。原審は、被告が本件特許発明により独占排他的利益を得たと認めるに足りないと原告の請求を棄却し、これに対し原告が控訴した。

ちなみに、発明振興法によれば、従業員等は、職務発明について特許等を受ける権利や特許権等を契約や勤務規定に基づき使用者等に承継させた場合は、正当な補償を受ける権利を有し、その補償額を定める際には、その発明により使用者等が得る利益と従業員等が貢献した程度等を考慮しなければならないと規定している。

本事案において特許法院は原告の控訴を容認し、第一に、職務発明について使用者は法定通常実施権を有することになるので、使用者が職務発明を単に実施することによって得たコスト削減の利益が職務発明補償金を算定する際に考慮されるべき要素である「使用者の利益」に直接該当するものではない、第二に、職務発明補償金を算定する際に考慮すべき要素としての「使用者の利益」は、通常実施権を超えて職務発明を独占排他的に実施することができる地位を取得することにより得る利益を意味する、第三に、本事案において使用者が得た独占排他的利益は職務発明を行うことによってコスト削減の利益を享受し、競争事業者はこのようなコスト削減の利益を享受できないので市場において競争上の有利な地位を有することになる、第四に、本事案において使用者の有する競争上の地位は当該特許権について専用実施権者の享受できる地位に類似するとみることができるから、当該特許権の専用実施権料に相当する金額から通常実施権料に相当する金額を控除した金額を使用者の利益とみるべきであると認定した。

要約すると、この判例では、職務発明の実施によるコスト削減額自体が職務発明補償金を算定する際の考慮要素である使用者の利益とは認められず、当該特許権の専用実施権料に相当する金額から当該特許権の通常実施権料に相当する金額を控除した金額が使用者の利益と認められ、職務発明補償金を算定する際に考慮すべきであると判示した。
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